都営地下鉄大江戸線の清澄乗務区(江東区)にある宿直施設内において、計39人の運転士らが新型コロナウイルスに集団感染した原因が、同施設内にある共有洗面所の手回し式蛇口の可能性が高いことが、東京都交通局への取材でわかった。直接手を触れたり操作したりする住宅設備の感染リスクが浮き彫りになった。交通局担当者は「保健所の調査で不特定多数が利用する蛇口が起因していると指摘された」と説明。今後の感染防止を徹底するため、非接触型の自動水栓に切り替えることも検討している。
東京都交通局によると、昨年12月中旬以降、都営地下鉄大江戸線の清澄乗務区にある宿直施設内において、運転士38人、内勤1人が新型コロナに感染するクラスター(感染者集団)が発生した。現在、1人をのぞいて職場復帰している。いずれも軽症という。この影響で運行本数を年末年始の2週間、約7割に減らしていた。
交通局担当者によると、運転士が始発や深夜運行に備えて待機したり、寝たりする宿直施設の寝室は個室で感染対策を徹底していた。共有部分の飲食スペースや休憩エリアは約36m2ある広い空間で、マスク着用の義務付けや飛沫を避けるためのアクリル板の設置、手指の消毒などの感染対策を強化していた。
同担当は「ただ手や顔を洗ったり、歯を磨いたりする洗面所や、台所、浴室は共用で、その対策が盲点だった。保健所の調査で、うがいや手洗い、歯磨きで使用する手回し式蛇口に唾液が付着して感染拡大した可能性が高いと報告を受けた」と明かす。現在は共有部を使用した者が除菌や消毒を必ず行うほか、手回し式蛇口を利用する際は、キッチンペーパーを介して回すように対策を取っている。
その後、1月4日以降は新規感染者が出ていないため、「対策は一定効果が出ている」(同担当)とし、今後について「予算の兼ね合いもあるが、今後、感染防止を図るためにタッチレスやセンターなど、非接触の自動水栓に切り替えることを検討している」と説明する。
新型コロナ感染拡大の影響を受け、生活者の間でも、非接触型の住宅設備のニーズは高まっているようだ。TOTO(福岡県北九州市)が昨年12月に行った、コロナ禍での住宅に対する意識やリフォーム意向を把握するための実態調査の結果によると、今の自宅をリフォームして住み続けたいと4人に1人が回答し、キッチンは42.7%、洗面所は38.7%が自動水栓を設けたい意向を示した。