新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、建物の窓開け換気が盛んに呼びかけられるなか、エアコン1台で全館空調を行う「マッハシステム(※1)」を展開するFHアライアンス(愛知県春日井市)は、窓開け換気より確実な空気清浄を可能にし、新型コロナ対策にもなる、大風量還気(※2)と大風量用空気清浄ユニットを組み合わせた「新・全館空調システム」を会員工務店(63社)向けに発売する。
窓開けず必要換気量を確保
ウイルスが空気中を漂い人の粘膜から感染するケースには飛沫感染と空気感染があり、室内でのこうした感染を防ぐための対策として、厚生労働省などにより窓開け換気が推奨されている。ただ、冬の寒い時期に、同省が示す1時間に2回以上、2方向の窓を全開にする換気方法を実践するのは、なかなか難しい。そんな中、同社のマッハシステムのような、窓を開けることなく必要な換気量を確保できる大風量の循環型全館空調システムに関心が向けられているという。
全館空調に対しては、一部に「空気を循環させることでウイルスを家中にばらまくのでは」との見方もあったが、大風量の空気を繰り返し還気(※2)する過程で汚れた空気を希釈することになり、結果的に感染のリスクを低減できるとする検証データなどもある。
一般住宅における換気回数については、建築基準法で1時間当たり0.5回と定められているが、CO2などの空気の汚れ対策としては不十分で、病院の集中治療室や一般病棟では同6回、感染症用隔離病室では同12回と日本病院設備設計ガイドラインで規定されている。
空気清浄ユニットをビルトイン
FHアライアンスが会員工務店が手掛ける新築住宅向けに発売する新たな全館空調システムでは、空調ユニット内に大風量のDCファンとともに、電子式集塵フィルターを内蔵した空気清浄ユニットをビルトイン。それにより、空気清浄能力を換気回数に換算した相当換気量が空調による換気回数にプラスされることで、病院並みの換気回数を確保することと等しくなるという。
採用する電子式集塵フィルターは、ウイルスとほとんど同じ粒子サイズ(0.08μm)の粉塵を、1回の通過で捕集する高効率な機能を備え、北里環境科学センターの試験評価で、5分間の作動で99%以上の浮遊ウイルスを除去する性能が報告されている。
今後のスタンダードに
同システムに空気清浄ユニットを提供するトルネックス社長の松井周生さんは「マッハシステムは大風量で換気することでコロナウイルスの飛沫にさらされる量や時間を減らし、感染の可能性を低減する効果があるが、ここに当社の空気清浄ユニットをビルトインすることで、相当換気量(処理風量×捕集効率)を増やすことにつながる」とし、「別に空気清浄機を設置することも可能だが、風量が小さいので十分な効果があるか疑問。ビルトインにより大風量につながり、電気代やフィルター交換のためのメンテナンスコストなどの軽減にもつながる。デザイン性なども考慮すると、空気清浄システムを空調室にビルトインするスタイルがスタンダードになるだろう」と話す。
コロナ対策“自主待機室”設置にも
FHアライアンス会長の廣石和朗さんは「新システムを活用すれば、感染が心配な家族のために“自主待機室”を設置することも可能だ」とする。廣石さんによると、自主待機室は、ダクトから新鮮な空気を供給しながら窓から排気する部屋で、「全館空調システムならではの新型コロナウイルス対策として、新たな市場を拡大していきたい」とする。
※1 マッハシステム… 空調ユニットと冷暖房空気を送り出すDCファンとダクトで構成される循環式全館空調用システム。全熱交換型第1種換気装置が連動することで新鮮な外気を空調ユニットに取り入れ、各室内の汚れた空気は熱交換され排気される。空調ユニット内のエアコンで冷暖房した空気を給気DCファンで各室に給気し、再び空調ユニットに戻す仕組みで感染対策に役立つ
※2 還気… 屋外から引き込む外気に対して、室内の空気を空調ユニットに引き込み循環させる空気