新建ハウジングが発行する「プラスワン」で連載していた「木造住宅『耐久性向上』のレシピ」を、「新建ハウジングDIGITAL」に場所を移して配信中。今回は住宅用の外装としてじわじわと伸びている鋼板の耐久性について見ていく。
鋼板は0.35〜0.4mmという非常に薄い素材のなかにめっきや塗装を組み込み、性能を確保している。材料の種類も多く、劣化のメカニズムについても知られていない部分が多いため、まずは材料の基礎知識から紹介する。(取材・文:大菅力)
塗装の役割と性能
最初に素材の耐久性を決定する塗装とめっきについてまとめる。まずは塗装の役割と性能について解説する。
塗装は水や酸素、腐食性イオンからめっき層を守るバリアの役割と防錆顔料による防食の役割を担う。鋼板を塗装する際にはめっき層の上に下地処理を行い、鋼板と下塗り塗膜の密着性を高める。かつてはクロメート皮膜をつくる方法が一般的だったが、1990年代後半より同処理に用いる六価クロムの環境負荷が問題になり、現在は無機系皮膜などに代替された。
下地処理の上に下塗り塗料(プライマー)を塗布する。下塗り塗料は下地処理と上塗り塗料との密着性を高めるほか、塗料に含まれる防錆顔料によって防食も図る。下塗り塗料には主にエポキシ樹脂系塗料が用いられる
塗装鋼板は表面のほか部や切断面の耐食性が重要になる。下塗り塗料に含まれるクロム酸ストロンチウムなどの防錆顔料は塗膜を形成した後にじわじわと溶解し、端部や切断面から塗膜が剥離することを防ぐ。なお防錆顔料も非クロム系への切り替えが進みつつある。
上塗り塗装は意匠性の付与と水と酸素、腐食性イオンなどを遮断する役割を担う。長期間の遮断には塗膜の耐久性が求められる。
塗膜は主成分である樹脂が紫外線により徐々に分解され、劣化が進む。まずは光沢が失われて色あせ、やがて塗膜が割れるとともに塗膜自体が薄くなり、保護機能が失われる。塗膜の保護機能が低下すると、塗膜の下で高アルカリ化が進み、塗膜とめっき界面で剥離が生じやすくなる。上塗り塗料の耐久性は非常に重要だ。
上塗り塗料の耐久性は樹脂成分に左右される。塗装鋼板の汎用品はポリエステル樹脂、上級品はフッ素樹脂が多い。鋼板メーカーでは塗装の耐久性に応じた穴開き保証を行っている。後述する溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっきを施した鋼板(ガルバリウム鋼板)の場合、ポリエステル樹脂塗装で10年、フッ素樹脂塗装で20年が多い。
塗装の耐久性については、地方独立行政法人北海道立総合研究機構建築研究本部 北方建築総合研究所による「建築材料の耐久性に関する調査」が参考になる。同調査ではさまざまな種類の塗装鋼板に対して複数の耐久性試験を行っている。それぞれの試験で性能が初期の4割まで低下するのにかかった時間を比較すると、ポリエステル塗料には耐久性の低いものが多く、フッ素パウダー入りやフッ素塗料では耐久性の向上が認められている。