インテリアから家づくりを考える――。
約25年前に、老舗材木卸から工務店を創業し、事業の多角化でインテリアショップをオープン。これまでにない着眼点で、自社の家づくりの価値観や魅力の発信に努めてきたTIMBER YARD/コージーライフ(千葉市)。
性能とデザインを両立した住空間を実現させる同社社長の並木浩さんにその取り組みについて聞いた。
並木さんは大学卒業後、輸入木材の専門商社の勤務を経て、家業である老舗材木卸「並木木材」に入社し、1992年に代表に就任した。同社はその関連会社として1995年、新築注文の設計から施工を担う工務店として創業。同年、美浜区の工業地帯にある自社倉庫を大型改修し、オーダー家具や国内外のデザイン家具・照明・雑貨から設備までを揃えたインテリアショップ「TIMBER YARD(ティンバーヤード)」をオープンさせた。
今でこそ工務店の事業の多角化は一般的だ。しかし25年前は「工務店がインテリアショップを開く」というのは稀な存在だった。そんな中、並木さんには確固たるビジョンがあった。「前職は木材商社に勤め、アメリカやカナダ、北欧と取引きしていた。それぞれの国や地域の気候風土に根差した住空間と家具が調和された住まいを目の当たりにするうちに、日本はそれができているのかと疑問を持つようになった」とし、「家づくりからインテリア、雑貨、照明までトータルで提案し、卸 の経験を生かしながら“インテリアから家づくりを考える”という着眼点で挑戦しようと決意した」と振り返る。
商店や住宅のない工業地帯にある同インテリアショップにはカフェを併設。平日の昼には主婦が、夜には若者が、休日には親子連れで賑わうようになった。「上質なインテリアを提供することで、住まいをイメージさせる」という狙いがささり、20代後半~30代の住宅取得者層に向け、広告を打たずとも口コミなどで広がり、それが家づくりの集客装置となった。
SE構法で意匠設計に特化し単価5800万円台
並木さんは「当初はデザイン一辺倒だったが、徐々に性能に力を入れ始め、外断熱や金物構法なども取り入れた。そんな中で、デザインと性能を両立した家づくりの要望が増加し、3階建ての依頼なども来るようになった」と振り返る。その過程で構造計算や大開口などを取り入れた家づくりを追求しようと2008年に、エヌ・シー・エヌ(東京都港区、田鎖郁男社長)に登録したという。
「工務店業では地域で後発の部類に入る。二代目でもなければ、横の繋がりもない。もっと知識や情報を吸収しようと住宅フランチャイズや団体に加盟したが、商品やノウハウを買うということが目的化されていた」と並木さんは苦笑する。ただエヌ・シー・エヌについては「これまでと違った」と強調。
「住宅、建設関連の法改正や制度の対処法などのソフト面でサポート体制が手厚い。SE構法により柱や梁などが少なく開放的な空間設計でも耐震性能を確保でき、これまで難しかった天井高を上げた広がりのある空間設計が可能になった」と話す。意匠設計や内装に特化できるようになったことで、平均単価も5800万円台にまで上昇したという。
新たな経営者の接点
同社は、エヌ・シー・エヌが主催する「重量木骨プレミアムパートナー」に選出されている。SE構法を採用する国内500社以上の事業者の中から、設計・施工の高い品質や技術、性能などに加え、第三者機関による現場検査、完成保証、経営状況など高い基準をクリアし、審査によって選ばれた約60社が所属している組織だ。
並木さんは「何よりレベルの高い全国にいる同業者の経営者同士で情報交換し合ったり、実際に現場を行き来したりしている。ワンランク上の木造住宅を手掛ける同じ方向を向いた仲間同士のコミュニケーションの取れる場にもなっている」と話す。商圏外のプレミアムパートナーからお客さんを紹介してもらう事例も出てきているという。